Atlassian Advent Calendar 2024 の12/3の記事です🎅🎄
昨年10月にアトラシアンが Loom を買収し、これに伴いアトラシアン社員は社内で自由にこのツールを使えるようになりました。この1年間でこのツールを使って感銘を受けたところが多くあったので、この記事で紹介しようと思います。また、非同期の動画共有ツールの使い所、Tipsについて私の主観でおすすめの使い方をご紹介しようと思います。
Loomは、特にリモートワークや分散チームにおけるコミュニケーションを円滑にするために設計された非同期の動画共有ツールです。コンピュータやモバイル機器の画面の録画、音声、カメラ映像を非常に簡単に合成することができ、そのまま即座にウェブ上で共有できます。テキストやメールでは伝わりにくいニュアンスを映像で補完して、チームメンバー間の情報伝達を効率的にすることを目的としたツールです。
(Loom の画面。PC上の画面とカメラの動画を合成して簡単にウェブで編集したり公開できる)
※この記事の後半で実際にツールで撮影した動画をご覧いただけます。
私はアドバイザリーサービスという部署に所属しており、日本チームに加え、グローバルの同僚とも頻繁に情報連携を行っています。特に今年は、新しい製品に関する知見を深めるために、地域を跨いでコミュニケーションを取る機会が多くありました。
一方で、日本在住者にとって、特に米国のチームとの頻繁なミーティングは時差の関係から負担が大きいものです。特に私は昨年育児休暇から復帰したばかりで、一歳の子どもに朝食を与えながら朝7:30のミーティングに参加するのは少々大変でした。
(Before: 子供を抱きながらミーティングに出ている様子。登場させると一応“Cute!“ などと言ってもらえてそれはそれで嬉しいが、ミーティングに集中はできない)
育児に限らずこのような悩みは私に限ったことではなかったようで、オーストラリア、米国、欧州に多くのメンバーが勤務しているアトラシアンでは、時差の問題やメンバーのスケジュール調整の課題が常に発生していました。その流れから、ZoomミーティングをLoomの非同期コミュニケーションに置き換える試みが各所で見られるようになりました。私自身も米国チームとの情報共有のためにLoomを活用してみた結果、早朝の時間を避けられるようになったことで時間にゆとりが生まれるようになりました。また、「ミーティング参加者全員の予定が空くのが2週間後」のような状況があったときに、2週間後のミーティングを待つ代わりに、さっさと話したいことを録画して共有する、という行動ができるようになりました。自分の手持ちの待ちタスクを減らせて他の仕事に集中できるようになる点も良かったと思います。
(After: 同僚が共有した 動画についてのまとめを動画で撮影している様子。全て非同期コミュニケーションで完結している。ビデオレターを送り合っているような感覚)
個人的なQOLの向上という観点で紹介しましたが、非同期でのコミュニケーションにはナレッジワーカーの生産性を向上させるポテンシャルがあります。アトラシアンが公式のブログで「無意味なミーティング」に浪費されるコストについて言及しているのでぜひご参照下さい。
非同期コミュニケーションをどのようなタイミングで使用するかという観点では、公式でHow to run effective meetings in the era of hybrid work のような記事が存在しますが、この記事では私が個人的に考えている基準をご紹介します。
ミーティングに対して「(結論の)方向性が見えているか」「議論の進め方が明確か」という二つの軸を設け、この基準に基づきミーティングがどの位置にあるかによって、非同期が適しているか、同期が適しているかを判断できると考えています。この基準において「方向性が明確で」かつ「議論の進め方も明確」な右上の象限に位置するミーティングは、非同期に置き換えることができる可能性が高いです。
せっかくなのでLoom 動画で解説します。
同じ内容を以下にも記載します。
具体的に右上の象限に該当するミーティングとしてはステータス報告会や研修などがあります。このようなミーティングは、すでに方向性は決まっており、どのような議論を行うかも明確であることが多いと考えられます。こういったコミュニケーションはLoom録画にしてしまう方が効率的である可能性が高いです。
また、何らかの文書やプログラムのレビューを求める際にも、ある程度方向性は見えており補完的な意見を求めることが目的であれば非同期で幅広く意見を募る方が好ましいでしょう。
右下の象限については意見が分かれるかもしれません。個人的には、ブレインストーミングのような議論は同期で行った方が効果的であると考えていましたが、(外部記事)「ブレスト」なんてもう時代遅れ。Google式「クレイジー8」で本当にすごいアイデアが生み出せる理由 のような
「複数人で顔を合わせてブレストを行うグループ」よりも「複数人が個別にアイデアを出すグループ」の方が、より多くかつ質の高いアイデアを生み出せる傾向にある
といった観点からすると、アイデアを導き出すプロセスにおいても、個人がまず非同期で取り組むことがよりクリエイティブな発想を生むかもしれません。
一方で、同期でのミーティングが特に効果を発揮するのは、特にこの図での左側、議論の進め方が不明な場合でしょう。ペアプログラミングを通じて問題を解決したり、既に確定しているプロジェクトの進行方向について戦略を練ったりする際には、同期でのミーティングがより良い議論を促進するはずです。また、たとえば新入社員のオンボーディングなど、議論の進め方も結論もわからない、暗中模索の状態の場合はコミュニケーションは同期で密に実施した方が効率的であると考えられます。
以降は非同期動画を利用する際のTipsです。
カメラやマイクをオンにすると、しっかりとした動画を作ろうとしがちですが、Loom 動画を撮影する際は肩の力を抜いて2-3分の動画を作るという気持ちで良いと思います。話すトピックを絞り込んで、簡潔な内容で作れば大丈夫です。また、複数の短い動画を作って、You Can Now Stitch Looms Together のように一つの動画にまとめてしまうことも可能です。数名の短い動画が集まればそれでステータスや知見の共有会などができてしまいます。
動画を作成するとたくさんの人に見てもらいたいという気持ちになりますが、閲覧数は気にする必要はありません。同期ミーティングでは一対一で会話することも多くあるので、それを非同期コミュニケーションに置き換えただけでも十分にお互いの時間を確保できたといえます。
Loom は2倍速で見てもらうのがデフォルト、くらいの気持ちで十分だと思います。また、Loom のAIは自動的にFiller word (ahh, hmmのようなもの)やSilence (沈黙)を削除してくれます。Filler word は英語の方が精度が良い(日本語の「えっと」のようなワードはFiller wordとして選ばれない)ので、日本語で話している時に言葉に詰まったら、沈黙して次の言葉を考えるくらいの方がちょうどいいと思います。
また、うまく話がまとまらなかったら落ち着いてもう一度喋り直せばOKです。うまく喋れなかったところは後で編集で削除してしまえば問題ありません。
自分が母国語以外の言語で喋るのを撮影するというのは気恥ずかしいものがありますが、同期ミーティングで一発でしゃべるよりも非同期でちゃんと準備した上でしゃべる方が上手に話せます。上述と同じで、「どうせ2倍速で見られるんだから」くらいの気持ちで、ゆっくりと話すことをお勧めします。
ちなみに、Loom には字幕生成の機能があり、この字幕の精度をどのくらい高く出せたか見ることで、自分の発音をチェックできて勉強になっています。
これは完全に機能と関係なく主観なのですが、社内で書いたConfluence の記事に「いいね」をつけられるのよりも Loom につく「いいね」の方が嬉しいです。Loom ではリアクションだけでなくコメントも文脈に対してつけられる仕組みがあるので、これが入ってくるとLoom のプラットフォーム上で会話をしている実感がより湧きます。
同期のミーティングだとまとまりがないままダラダラと話してしまうようなことがありますが、非同期の動画だと短くてもある程度シナリオを考えた上で話すようになります。こうやって作成された動画は、後々見返しても有益なことがしばしばあります。この動画自体が自分の仕事の成果物としてみなせるので、Loom 動画を作成した件数を自分の仕事の一つの指標にするようなこともできると思います。
Loom は無料プランもありますので、もし興味が湧いたら 製品紹介ページ からお試しください。
また、アトラシアンでは Loom に限らず非同期でのコミュニケーションにおける知見が蓄積されています。コンサルティングをご希望の場合は弊社のアドバイザリーサービスまでお問い合わせください。
なお、Advent Calendar 2024は 12/3時点でまだ枠がありますので、書きたいテーマがある方はぜひ!書かなくても Loom の動画共有も歓迎です。
Nobuyuki Mukai
Enterprise Technical Architect
Atlassian
Japan
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